俺“だけ”のフレンチ。|Renault MEGANE R.S. TROPHY|AP GARAGE & KICKS GARAGE

 

 

いかに電脳化時代になっても、刺激的な新型車が出ても動じることなし。 ひたすら両手両足を使って、マニュアルのホットハッチを嗜んでいたい。 今回、出合った2台のメガーヌR.S.トロフィーはそんなことを教えてくれた。

 

日本の改造職人たちが紡ぎ出す、和洋折衷のピリ辛ホットハッチ。

 

自動運転技術が日進月歩で進化し、クルマ趣味を侵食しつつある。CASEに代表されるその方向性が、加速度的に新型車をEV化を伴う自動運転へと移行させている。でも僕はもっと前から、意外なところで“自動化”の波を感じていた。それも超ニッチなところ。メガーヌR.S.やルーテシアR.S.などルノーのスポーツモデルが、次々と2ペダル化されていることだ。現行型をみればメガーヌR.S.にこそ6速MTが設定されているものの、「主軸は2ペダル感」が濃厚である。いかに時流から逸れようとも、日本でもっともマニュアルを推進してきた存在だったのに。「ルノーよ、お前もか!」と叫びたくなった。

自動運転なんて言葉が定着するとっくの昔から、世の中に2ペダル化が始まったのはもちろん知っている。だってそのほうが速いし、楽だし、効率的だから。工業製品の進化としては、至極真っ当である。とはいえ、両手両足を使って必死にクルマと向き合う3ペダルには、そうした理性とは別の楽しさがあるのもまた事実だ。それを見抜いて作ったような今回の2台。まさにドンピシャで、そういう楽しさを提案しているようだった。

キックスガレージが製作したメガーヌR.S.トロフィーは、サスペンションとホイールだけを交換して、あとは腕っ節勝負でチャキチャキ走れる仕上げ。手数は多くないけれどもそれが妙にキマっているのは、フィフティーン52ホイールの威力が大きい。youtubeのジムカーナ・シリーズで一躍世界のヒーローになったケン・ブロックとの共同で開発されたターマックだ。かの動画では650psを超えるフォード・フィエスタに装着されていた。世界中でドリフトしながら飛んだり跳ねたりと、驚愕のシーンでもホイールは最後まで立派に機能し続けた。これほど説得力のあるものはない。さらにラルグスの全長調整式車高調でセッティングを詰めたことで、どこまでも踏み抜けるピュアなホットハッチとなった。

対する、APガレージもメガーヌR.S.トロフィーだが、そのアプローチはけっこう違った。キックスガレージがラリー風味だったのに対して、コチラはサーキット系だ。ビルシュタインB14キットを使ってセッティングを詰めつつ、足元に投入したのはタイタン7 T-S5フォージドだった。その上でレーシーな雰囲気とポテンシャルアップを両立させるためのフロントカナードやR.S.パフォーマンス製エキゾーストなど、やり過ぎない範囲での個性化を図る。そこに、さりげなくR.S.16風ステッカーが添えられるのが玄人っぽい。インテリアもレカロのフルバケットシートやスパルコのステアリングなどでやる気満点だ。メガーヌR.S.が911GT3だとすれば、こちらはGT3 RSみたいなより研ぎ澄ました雰囲気をたたえている。

もともとメガーヌR.S.は、走る楽しさを充分に秘めた存在だ。ニュルでのラップタイムなら最新モデルには及ばないかもしれないが、走りの興奮度とか充足感という意味では負けていない。3ペダル愛好家だったり、電子制御に頼らない挙動変化フェチだったら、むしろ最新型以上と思う人だって少なくないはずだ。

その上でチューニングの方向性によって、あらゆる表情を見せることが今回でわかった。興味深いのは、彼らはともにエアサスを組んだスタンス系を得意としていることだった。人生を懸けてドレスアップに勤しみ、シャコタンの美学を追求する彼らが、今回ばかりはスタイル優先の要素をいっさい排除して、走りを楽しむためだけに本気で仕上げたボーイズレーサーであったところが面白い。実際、ストリートを流すだけで興奮するような楽しさを持ちながら、そこにかすかな色気まで漂わせるのが彼らの技術とセンスか。ヨーロッパ伝統のモータースポーツ系パーツで固めるだけとは違う。ちょっとしたアメリカンテイストをフレンチに投入しつつ日本の技術で鍛えた、まさに“俺だけのフレンチ”だった。

 

 

随所に色気を感じるサーキット仕立て。|AP GARAGE

サスペンションにタイヤホイール、そしてエキゾーストと、教科書どおりのホットハッチチューニングが施された。とはいっても、あらゆるカスタムジャンルに精通するAPガレージなだけに、パーツセレクトやセッティングなどには抜群の個性が宿る。ビルシュタインB14にブレンボ(トロフィー純正)というヨーロピアンの足まわりを支えるのがタイタン7 T-S5フォージドであるところがいい。サイズは前後とも18×8.5なので、タイヤ銘柄の選択肢も豊富だ。現在はミシュラン・パイロットスポーツ4(235/40R18)で、サーキットもガンガン走れる。

 

AP GARAGE MEGANE R.S. TROPHY (2015)
ホイール>>タイタン7 T-S5フォージド(F&R:18×8.5)
タイヤ>>ミシュラン・パイロットスポーツ4(F&R:235/40R18)
サスペンション>>ビルシュタインB14 ブレーキ ブレンボ・ブレーキシステム(オリジナル) 吸排気 R.S.パフォーマンス・エキゾーストシステム
ボディパーツ>>フロントカナード
インテリア>>スパルコL360ステアリング、レカロRS-Gシート

 

ただシンプルに素材の魅力を引き出す。|KICKS GARAGE

ラリーホイールみたいな無骨な星形スポークを持つフィフティーン52ターマックが、メガーヌR.S.のホットハッチ感を高めている。ラルグスの車高調のセッティングも抜群。スタンス系が得意なキックスガレージのセッティングに加え、クルマや走りに対して研究熱心なオーナー氏の努力の賜物だ。タイヤサイズはAPガレージと同じく235/40R18。敢えて18インチに抑えることで、とにかく走りまくるのだ。カーボンエンドが取り囲むアクラポヴィッチ製エキゾーストはトロフィーには標準装備。ヘタなアフター品よりも高品質で快音を奏でていた。

 

KICKS GARAGE MEGANE R.S. TROPHY (2015)
ホイール>>フィフティーン52.ターマック(F&R:18×8.5)
タイヤ>>ニットー NT55S G2(F&R:235/40R18)
サスペンション>>ラルグス・スペックSI全長調整式車高調

 

 

 

 

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掲載:eS4 No.89 2020年10月10日発売(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

 

<問い合わせ>

APガレージ ☎06-4862-7775 https://www.apgaragejp.com

キックスガレージ ☎0836-39-8173

photo_白谷 賢 SHIRATANI KEN

text_中三川大地 NAKAMIGAWA DAICHI