夜に駆ける。|Mercedes-AMG GT S|Roncraft

 

 

沈むように、溶けていくように地を這うAMG GT Sが銀座の夜を駆ける。 もっと自由気ままに、自分らしく乗りこなすメルセデスがあってもいい。 その姿は、最善は乗り手の数だけ存在するのだと教えてくれる。

 

エアサスによるロワードがGT本来の姿を蘇らせる。

 

いつの時代もジャーマンプレミアムを象徴する存在がメルセデスだ。何度も聞かされてきた「最善か無か」の思想は、モディファイの世界にも根付く。舶来品崇拝気質も手伝ってか、あくまでストックこそが正義で、チューナーズスタイルこそが神格化の対象なのだ。そんなシーンを、どこかもどかしく感じていたのがロンクラフトの中嶋代表だ。自由きままなカスタマイズの象徴であるアメリカン鍛造の使い手にして、カーボンスポイラーブランド、ストンピンアークをプロデュースする気鋭のトレンドセッターである。

「最善は乗り手の数だけ存在する」

彼の想いが確信へと変わったのが2019年に視察したエッセンモーターショーだ。「幅広いレンジのクルマにエアサスが装着されていたのです。これは自分でもエアサスを使ったセットアップを研究しなくては、と思いました」。

エアサスとアメ鍛を使って、メルセデスモディファイの新しいアプローチを切り拓く。そのための旗印でなくてはいけない。スポーツカーがスピードやパワーといった数値だけで評価される時代は終わった。グランツーリスモとしての能力を持ち合わせることが必須だ。目指したのは、最速の性能と最上のラグジュアリーを兼ね備えるAMG GTに、新たなスタイルを与えた上でのベストバランスだ。

ベースとなるのは、全国20台限定の「AMG GT Sカーボンパフォーマンスリミテッド」。AMGのスペシャルモデルであってもロンクラフトのメソッドは変わらない。それは純正のスタイリングを生かすこと。スポーツカーらしいロングノーズ、キャビンが後方に追いやられた美しいシルエットがエアサスによって地を這う。その姿はまるで、今や世界中のシリーズタイトルを総なめにするAMG GT3のようだ。だからこそセットアップにはこだわった。「エアサスだから」と走りの味わいにネガティブな要素は一切ない。足元は、ロンクラフトが数々のプロジェクトでタッグを組んできたニュートレイルが飾る。2ピースのFLTエリートにパイロットスポーツ4Sを組み合わせた。セミフルフェイスデザインながらスポークはアウターリムに乗る、新しさの中にどこか懐かしさを感じる意匠。リアは抜群のフィットメントにより、フラットエリアを限界までコンケーブさせ、FRであることを強調する。最新のパフォーマンスモデルが4WDを選択するなか、AMG GTはフロントミドシップをトランスアクスルで後輪駆動させる。こうしたコンベンショナルなパッケージを貫くことに対する、中嶋氏流の回答だ。見逃せないのがストンピンアークの存在。エレガントさとマッチする飾りすぎないスポーツムードに、数あるリップスポイラーの中からストンピンアークが指名買いされる理由を改めて実感する。

華やかさに遊び心を同居させたロンクラフト流のコーディネートには、AMG GTが持つ哲学を理解しているからこそ、わざと異端に見せる玄人っぽさが滲む。夜の銀座を駆けるAMG GT Sに、メルセデスモディファイの新時代を見た。

 

 

ホイールは、モノフェイスの2ピース、FLTエリート。ピアスボルトは、表打ちと裏打ちを交互にレイアウトする。カーボンセラミックローターを用いた「AMGカーボンセラミックブレーキ」を標準装備。自らの愛車だからこそ、攻めのセットアップができたと語る。

 

インフュージョン製法はドライカーボンのような黒々とした表情が魅力。ハイグロスブラックカーボンパーツで加飾されるカーボンパフォーマンスリミテッドにこそ相応しい。マフラーはスーパースプリントを装着。エアサスタンクはラゲッジにレイアウトされる。インテリアカラーは「サドルブラウン」だ。プロテクションフィルムも自社で施工しており、ストックの持つ質感をスポイルすることなく、ボディを保護してくれる。極低車高で走るこのGTにとっては強い味方だ。中嶋代表は自らの愛車に必ずFRを選ぶ。ハイパワーを操るには4WDがよいことはわかっている。ひとたびラフに扱えばスリップするかも知れない、マシンとの密な対話が求められるFRを好む。

 

Mercedes-AMG GT S カーボンパフォーマンスリミテッド 2017年式|ホイール:ニュートレイル・FLTエリート(F:20×10.0 R21×12.5)|タイヤ:ミシュラン・パイロットスポーツ4S(F:275/30R20 R:325/25R21)|足まわり:エアリフト、プルーム|吸排気:スーパースプリント

 

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掲載:eS4 No.92 2021年4月9日発売(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

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PHOTO>>KUNIHISA KOBAYASHI(小林邦寿)