硬派な歌舞伎者。|Porsche 911 GT3 RS Type 991 & 911 GT3 Type 991.2|THE CHECK SHOP

2台のGT3が人々の目を釘付けするほどの存在感を露わにした。 鍛え上げられた筋肉をわずかに感じさせながら上質な衣装を着こなす、 裏で地道に努力を重ねたからこその、歌舞伎役者のようなオーラがあった。

 

自分らしく自由な気持ちで、GT3を着こなしたい。

 

日常では至極快適でゴージャスで、鼻歌まじりで転がせるのに、いざとなれば空を飛ぶように速い。そんな911ターボ勢を敷いておきながら、ドライビングファンのためには別立てでGT3を用意する。それが水冷化以降のポルシェ911だった。

このGT3、真の意味で着こなし、そして乗りこなすのはけっこう難しい。“乗りこなす”ためにはひたすらサーキット通いをするしかないだろう。問題は“着こなし”のほう。純正で十分という意見には賛同しつつも、できるのなら自分なりのオリジナリティーを加えて颯爽とサーキット通いをしたい。それがGT3であるがゆえ、走りの性能をスポイルするようでは台無しだ。あれもこれもと飾り立てていくようでは、911ターボを転がすのと変わらない。

その絶妙なセンを、いつも上手く実践してきたのがチェックショップだった。代表を務める大塚直彦氏のカスタムは独創的で、そのセンスには唸らされることばかり。子供の頃、モータースポーツ雑誌を穴のあくほど眺めて、レーシングカーの勇姿を心に刻んできた原体験が、そのクルマづくりに生かされている。今だって時間を見つけてはサーキットに通い、富士で1分47秒台をたたき出すGT3 RSを作り上げるほど。

この日、出合った2台のGT3。正確には991型のGT3 RSと、991.2型(後期)のGT3だ。早朝の都心に現れた2台は、他のGT3勢とは違う世界観を持っていた。

純白のGT3 RSは、それがRSということも手伝って、レーシングカーの雰囲気が色濃い。それを際立たせているのがホイールだ。カリフォルニア生まれのポカールホイールにあるDR5。このディッシュデザインは、いかにも往年のレーシングカーっぽく、70年代後半を彷彿とさせる。まるでたった今、ポルシェファクトリーから飛び出してきた935のような雰囲気である。当時の935はフラットノーズで、純レーシングカーではあったものの、あの系譜が今に受け継がれていたらこんな姿になったのではないかと夢想してしまう。徹底的に装飾をはいしている中で、唯一の遊び心として930のタータンチェックをバケットシートに取り入れたセンスには脱帽である。

対して991.2型のGT3は、よりストリートチューニングカーっぽい。ボーイズレーサー風のディープリムホイールは、アージオ・コンペティツィオーネだ。アメリカ西海岸風の華やかさを持つアージオの中で、コンペティツィオーネはトコトン硬派なレーシングホイール路線である。このGT3はあえてそれをフルポリッシュにする大胆さ。これだけでガラリと雰囲気が見違えるから面白い。本当に速い者だけが実践できる遊びゴコロのような気がする。

しかもこのGT3は稀有な3ペダルの6速MT仕様だった。ただ単純に速さを追い求めるのであれば2ペダル(PDK)のほうがいいことはポルシェ自身が認めていて、だからこそ991型からのGT3は2ペダルになった。しかし、それでもなお3ペダルに酔いしれるファンのために、ポルシェはこうした仕様を用意してくれた。その個体は、その真意を理解したコーディネートだ。ステッチひとつにまでこだわってポルシェに特注したインテリアも一貫している。

この2台は同じGT3という存在でも、その捉え方はけっこう違う。最速を追い求めるレーシングカーがストリートへと舞い降りてきたかのようなGT3 RSに対して、GT3はストリートカーを自由な気持ちでイジってサーキットへ挑むような雰囲気だ。そうした意味では対極の2台でもある。

これら2台を構築するにあたり、欠かせない存在がJRZのサスペンションだった。オランダに生まれ、アメリカのモータースポーツシーンで活躍するブランドだ。この2台に導入されたのは減衰力の伸び側は21段階、縮み側は高速14段階、低速8段階で調整できる3ウェイ方式の車高調である。組み合わせるタイヤ&ホイールはもとより、シチュエーションやユーザーの好みによってきめ細かい設定ができる。ロールケージやトランクに取り付けられるサブタンクを見るだけでニヤリとできるドレスアップ効果を備えてもいる。

実際、荒れた路面でも衝撃を一発で押さえ込み、外面から想像する以上に快適な乗り味を持つことに驚く。ステアリングを握っている限り、20インチであることを忘れさせてくれる。サーキットに持ち出してセッティングを突き詰めれば、タイムアタックマシンとしても楽しめるはずだ。GT3であればむしろそれが本筋である。

それがレーシングカーであれば、規定されるレギュレーションの範囲内において、正解はひとつに絞られるのかもしれない。しかしストリートでは無数の選択肢があり、あらゆる正解がある。911GT3なんてツルシの状態がイチバンだと思うのなら、それでもいい。しかし、自分なりのテーマを設定して模索すれば、最低限の手数でここまで見違えることを再確認した。それを快諾し、ともに悩みセットアップした大塚氏の経験やスキルも見逃せないところ。大切なのは、GT3が持ちうる走行性能を決して壊してはならないということ。こうして機能と色気を両立させて走る様は、鍛え上げられた筋肉を華やかな衣装で隠す歌舞伎役者のようだ。真の歌舞伎役者は、その裏側で地道な努力を重ね続けるからこそ、表舞台でスポットライトを浴びるのである。

 

重量増を嫌ってエンブレムまでシールに置き換えるなど、徹底的に加飾をはいした存在がGT3 RSだ。巨大なリアウイングだって機能美に溢れている。4.0ℓフラットシックスから放出される出力性能は、最高出力520ps/8250rpm、最大トルク470Nm/6000rpmと、自然吸気の限界に挑むかのよう。こうした戦闘機に対してホイールをポカールDR5に置き換えるだけで雰囲気が見違える。70年代のレーシングカーが洗練されてよみがえった印象だ。純正はフロント20インチ、リア21インチとなるが、あえてリアも20インチに落として325/30サイズのミシュラン・パイロットスポーツカップ2を組み合わせている。車高を整えるのはJRZとなる。

Porsche 911 GT3 RS(Type 991) 2016年式|ホイール:ポカール・DR5(F:20インチ)|タイヤ:ミシュラン・パイロットスポーツカップ2|サスペンション:JRZ ・1231|インテリア:シート張り替え

 

991の後期型(991.2)になって設定されたGT3の6速MT(3ペダル)仕様がベースとなる。世界的に見ても稀有なMT仕様を味わい尽くしながら、遊びゴコロも取り入れたような1台である。ホイールはアージオ・コンペティツィオーネだから、銘柄だけを取ったらGT3と世界観が一致する。しかし、それをあえてフルポリッシュ仕上げにしてしまう大胆さ。リアのアウターリムは4.5インチという大迫力。速さでいったら2ペダル(7速PDK)に叶わなくとも、自分なりにGT3を楽しみたいという意思を、ホイールの色味ひとつで表現する。ダッシュボードの裏地にまで張り巡らされたレザーやイエローステッチなどインテリアも凝った仕上げ。ストリートで毎日ゲタ代わりに乗り倒していたらカッコいい。

 

Porsche 911 GT3(Type 991.2) 2019年式|ホイール:アージオ・コンペティツィオーネ MRF(F:20×9.0 R:20×12.0)|タイヤ:ミシュラン・パイロットスポーツカップ2(F:245/35R20 R:305/30R20)|足まわり:JRZ・RS PRO3

 

 

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掲載:eS4 No.91  2021年2月10日発売(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)
<問い合わせ>
THE CHECK SHOP(チェックショップ) ☎045-979-4001 http://checkeuro.sub.jp

PHOTO>>MOTOSUKE FUJII(藤井元輔/サルーテ)
TEXT>>DAICHI NAKAMIGAWA(中三川大地)